テガボン  俺の名前は「テガボン」。  もちろんあだ名だ。  なんで、そんなあだ名かって?  あまりおおっぴらにしてない話なんだが。  実は……。俺の左手が触った物はみ〜んな爆発しちまうんだ。  唯一、触っても爆発しないのは、自分の体だけ。もちろん、生まれつきじゃあない。  アレは大学二年の頃だったか。朝起きたら、自慢の羽毛布団が爆発して、辺り一面羽毛だらけになっていた。  理由はよくわからん。  とにかくその日から、触った物が爆発するようになったってワケだ。  一週間ぐらいして自分の体は爆発しないことに気付いて、自分の髪の毛で手袋を編んだが、それまでは大変だった、 コップを持てば粉々になるし、洋服は袖を通したそばから散り散りになる。彼女には危うく左手で触るところだったし、 手袋編むために髪の毛全部剃っちまったもんだから、結局振られたりもしたしな。  だが今ではこの黒い手袋が俺のトレードマークだ。  この能力を生かそうと俺はいろんな仕事をした。  まずは、ビル爆破。  壊したいビルの壁面に手を当てるだけで、ビルは粉々に崩れ落ちる。ただ、これは自分が巻き添いになるかもしれない危険な技だ。  ビル爆破の仕事とは関係ないが、いつぞやの倒壊テロの片方は俺の仕業だ。  いや、誤解しちゃ困るが、俺がテロ犯ってわけじゃないぜ。たまたま、たまたまなんだよ、その……手袋の小指んとこが破けててよ。  あんときゃ、俺も死ぬかと思ったね。    お次は、テーマパークのポップコーン作り。  コーンの入った釜を俺の左手でかき回すと、たちどころにそこかしこでコーンがはじけ、ポップコーンになる。  一時期はそれで「ポップコーンおじさん」として一世を風靡したモンだ。あんた知らないかい?  まぁ、「おじさん」ってのはどうかと思うがな。  最後はやっぱりコレだ。そう、コロシだよ。  海外のとある組織から依頼をうけ、さる重要な人物に会いに行く。なぁに、隠れたり、物陰からライフルで狙う必要なんて無い。  「あの件に関して重要なお話がある。是非二人でお話がしたい。」これで十分。  あとはにこやかな顔をして、握手をするだけさ。  ただ、相手がバラバラんなって吹き飛んでくるからよ。俺も血まみれ、ってか人まみれよ。  だから、何人かで辞めちまったよ。  え? どんな組織かって? 三文字ぐらいに略せる組織だよ。いや、これ以上は勘弁してくれ。  俺だって命は惜しい。  まぁ、そんなこんなで俺も「人生」生きてきたわけだが、俺は今、世紀の大プロジェクトに参加している。俺のこんな左手を使った 大プロジェクトなんだ。  俺はこの中でコードを握ったまま冷凍冬眠(コールドスリープ)すりゃあいいらしんだが、それでエンジンがずっと動くんだとよ。  頭のいいヤツが考えることは違ぇなあ。  ……おっといけねぇ、眠くなってきやがった。じゃあ、地球の地べたを這いつくばってるお前らともお別れだ……。目覚めたら…… 「異星人」が……出迎えてくれるん……だから……な……。  それ……じゃ……、あば……よ……。  全人類の喝采の中、地球人の代表テガボンを乗せた最新鋭ロケットは長い長い旅へと出発して行った。