<LARK 舞台版> 情景は冬。駅前の薄暗いベンチの前。少し寒がる。 たばこに火をつけ、一人の男が空を見上げる。 一服付いてからゆっくりと語り始める。     「出会いは突然訪れる。別れもまた同じ……。」     「あいつと出会ったのは、もう四年も前のこと。      二人とも、今よりもずっとずっと子供だった。      廻りから見たらとっても幼稚な恋だったかもしれない。      でも、二人。      バランス取って上手くやってきたつもりだった。」 少しの間。 「『あなたいい人だけど』昨日あいつは電話で僕にそういってきた。」 一服。     「唐突な別れの言葉に不思議と憎しみも哀しみもわいてこなかった。      ただ、ちょっとだけ、自分に腹が立っているだけ。」 一服。     「でも本当を言えば僕も自分がよく分からない。(自嘲気味に)      他人の気持ちよりも、僕には自分の気持ちが分からない。      もしも心がのぞけたら。      僕は真っ先に自分の心を覗くと思う。      まだ、あいつのことが好きなのか。      ……それとも。      それとも、ただ、冬の寒さに負けそうなのか。」 辺りを見回し、少し寒がる。     「人を好きになんてなれなきゃいい。      でも、僕はあいつに恋をした。      あいつがいなけりゃ、不幸にはならなかった。      でも!……でも、あいつは僕に幸せを、教えてくれた。」 客席を向き     「今日、僕はあいつを呼びだした。」 電話取りだし。「駅で待ってる」     「時間も告げず、返事も聞かず。      ただそれだけ言って、電話を切った。      そして今、僕はその場所にいる。」 一本吸い終える。 次を取り出さずに箱を眺める。     「やめてたタバコをかった。……やめろと言われたタバコを買った。」 最後の一本を取り出し、火をつける。     「このタバコを買ったとき。僕は一つの決心をしていた。      このタバコが無くなるまで、あいつを待ってみようと。      あいつが来るかこないかはもう、問題じゃなかった。      ただ、それを僕の心を覗く、めがねにしたかった。     ただ。それだけ。      そう、ただ……。      それだけ。」 火のついたタバコを見つめつつ、    「これが、……最後の一本。」 少しの間の後、 上手をふっと見たところで暗転。